机上の空論は上手くいかないことの方が多いです

机上の空論は上手くいかないことの方が多いです

私の会社は設立して10年ほど経ちますが、実は設立当初、今とは全く違うビジネスモデルで起業しようとしていました。当時、私は転売の個人事業で月に100万円ほど稼いでおり、転売だけを続けるのであれば個人事業主のままでも問題ないと考えていました。しかし、会社を設立し、もっと組織的に事業を展開しようと考えていたのです。



具体的には、転売で商品を仕入れてくるバイヤーと、商品を販売するセラーのマッチングを私の会社で行うというアイデアでした。私の会社と契約したバイヤーが商品を仕入れ、セラーが商品を販売することで、バイヤーは仕入れに、セラーは販売に専念できます。そして、私の会社はその仲介役を担い、利益の一部をいただくことで、まさに「三方よし」の理想的なビジネスモデルになると当時は本気で考えていました。



ところが、実際に株式会社を設立し、数人のバイヤーとセラーと契約してテストしたところ、これは全くうまくいかないということが判明しました。机上の空論では理論上は絶対にうまくいくと思われましたが、実際に実行してみると想定外の問題点が次々と発生したのです。



例えば、契約したバイヤーが不当な利益を載せて商品を卸してきたり、知り合いでありながらぼったくりのような価格で売りつけてきたりしました。それを知ったときは大変ショックでした。またセラーも、販売した商品のクレームや返品対応に苦慮し、すぐに辞めてしまうなど、本当にうまくいきませんでした。結局、その事業は断念せざるを得ませんでした。



結果的に、他の事業で年商1億円を超えることができたのは幸いでしたが、机上の空論ではうまくいくと思われても、実際に実行してみると様々な問題が発生することを痛感しました。



机上の空論といえば、個人事業主やスモールビジネスでよく見られるジョイントベンチャー(JV)の話をしましょう。このJVも、なかなかうまくいかないことが多いのです。



例えば、優れた商品を持っているがセールスに課題を抱えているA社と、集客力はあるが自社商品を持っていないB社がいたとします。両社がJVを組めば、互いの強みを生かしてお互いの売上を拡大できると一見思えるでしょう。しかし、これも結局はうまくいかないケースが多いのです。



実際に、私の会社がコンテンツ販売の集客を委託した広告代理店のC社との例をお話しします。C社は広告運用の対価として広告費の15%を手数料として弊社から支払う契約でした。C社が広告を運用し、私の会社の商品が順調に売れている間は問題ありませんでした。しかし、売上が伸び悩むと、私の会社は原因を探るために広告費を抑える一方、C社にとっては広告費が減ると自社の利益も減ってしまいます。そこで利益相反が発生し、両社の関係がうまくいかなくなるのは明白でした。実際、C社との取引は今では一切なくなってしまいました。



このケースでうまくいくようにするには、C社に売上の一定割合をレベニューシェアとして支払う形にすると、両社の目的を一致させられるでしょう。ただし、これにも注意点があります。当初は合意していたシェア率でも、後になって割合を巡って不満が出てくるケースが多いのです。自分は多く働いているのに、相手は楽をしていて、なのに利益の取り分は同じだと感じて不満が募ったり、その結果仕事に手を抜いたりシェア率の変更を求めたりし始めるのです。そこで折り合いがつかなくなり、結局はビジネスを辞めてしまうことになりがちです。



レベニューシェアでも、多くのケースではうまくいきません。本当に仲の良かった間柄でも、一緒にビジネスを始めてお金が絡むと、相手の本性が見えてくることがあるのです。私としては、安易にSNS上でつながった相手とJVを組んでレベニューシェアするのは、慎重に考えた方が良いのではないか考えています。